ある予備校の先生のツイートで知ったのですが、東北大学の入試の出題意図(特に、「志願者へのメッセージ」)が大変勉強になりますので、私の見解も含め、コメントしておきたいと思います。
大学入試なので、高校生や大学受験生にとってはダイレクトに重要なことですが、内容的には小学生や中学生こそがしっかりと実践したいものばかりです。なぜなら、ここで指摘されていることは、正しい「学習習慣」とでも言うべきものだからです。
確かな習慣を小中学生のうちに身につけておきたいというのは、習慣を身につけるにはある程度の時間が必要ということもあります。ただ、それ以上に、確かな学習習慣を身につけることで、学習が効果的・効率的に進められる、ということが大きいです。
勉強が苦手、勉強しているのに、塾に行っているのにテストや成績で成果がいまいち出ないという人は、ぜひ参考にして頂きたい内容です。
本当に大事な「主語-述語(動詞)」
東北大学の出題意図、特に、英語の出題意図および「志願者へのメッセージ」をぜひ読んでみてください。
(※赤のアンダーラインは僕が注目してほしい部分に引きました)
ここで重要なのは、くり返し述べられている通り、1文の構造、特に「主語-述語」の関係をしっかりと把握しよう、ということです。
英語なので、述語よりも動詞と言いかえた方が良いかもしれませんませんが、このメッセージにある通り、ことばによる表現であれば、文の核となる「主語-述語(動詞)」を理解して、正確に読み書きするというのは、英語であろうと日本語であろうと変わらずに大切なことです。
もっと言うなら、英語や国語に限らず、数学や理科、社会でも、あらゆる学習で不可欠な要素です。
先日、ある中学生から「英語(英作文)の問題でよく分からないものがある」と質問を受けました。が、よくよく話を聞くと、実は、よく分かっていないのは、英語の内容というよりも、日本語の読解、あるいは、作文だったということがありました。
こうした事例は、実は、けっこう多くあります。
そもそも日本語の読み書きがきちんと訓練されていないことによって、英語や数学、理科や社会などの学習がうまく進められていないのです。
数学の文章問題が苦手、理科や社会の問題文が読めない(何をどう答える問題かが分からない)というような事態に遭遇したことがある人は、もしかしたら、日本語の丁寧な読み書きの訓練が不足しているかもしれません。
僕は、国語を専門的に教えてはいますが、中学生に対しては、英語や数学など主要5教科を教える機会があります。
ですから、当然のように、生徒には「またかよ」と嫌な顔をされるくらい、「主語-述語(動詞)」について指摘しています。「主語はどれ?」「この文の述語(動詞)は何?」と。
国語の文法問題であれば、すぐに主語や述語を指摘できる生徒でも、たとえば、国語の長文や英語、その他の教科の問題文で「主語-述語」を意識して読んでいる人は、案外少ないものです。あるいは、誤って捉えている人も少なくありません。
「そりゃ、まちがえて当然だわ!」というのが、素直な感想です。
基礎・基本を徹底的に身につけ、常に、基礎・基本のルールに沿って進めていく・・・それができれば、解けるようになっているのが学校(テストや入試)の問題です。もちろん、中には難問奇問と呼ばれるような、ある種の特殊能力や訓練が必要なものもあります。ですが、それはごく一部です。圧倒的多数は、基礎・基本の積み重ねこそが問題を解く上での重要な要素となっています。
多くの人が「応用問題」という問題であっても、それは何か特殊な知識や技能が必要なものなのではなく、いくつかの基礎・基本を組み合わせているに過ぎません。
よく「基礎問題はできるけど、応用問題はできません」という声を耳にします。しかし、今お話ししたように「応用」は、いくつかの「基礎」に組み合わせです。ですから、「基礎はできるけど、応用ができない」という人は、実はまだまだ「基礎」の訓練が足りていないだけ、という可能性があります。
ぜひ、自分の学習で「基礎・基本」が徹底されているか、いま一度確認してみてください。
丁寧に字を書く(相手に読める字を書く)
さらに、「志願者へのメッセージ」では、重要な記述があります。むしろ、僕はこの内容の方を小中学生には重視してほしいですね。
実際のメッセージはこちらです。
大事な点は、大きく以下の3つです。
■誤字脱字(スペルミス)をしない
■文法的なミスをしない(3単現のSなど)
これらも、ある意味で「当たり前」のことです。「たしかに、これって大事だよね」と思った人は、おそらく普段から、無意識に注意できているはずです。
問題なのは、これらを「当たり前じゃん。自分は大丈夫」と思っている人。
僕の生徒には「また言ってる」と言われてしまうかもしれませんが、それくらい僕自身も「この文字、何て書いてある?」「これ読めないから書き直しね!」と口うるさく言っています。
その際に、素直に、丁寧に書き直す生徒は、感覚的には伸びやすい傾向があると思っています。一方、「自分は読めるから大丈夫」とか言って抵抗してくる(素直に書き直さない)生徒は当然のようにテストで減点されたり、×を付けられてきます。まさに、自分自身が損をしているのです。その時になって初めて、事の重大さが分かってももう遅い。
「当たり前のことを当たり前にやる/できる」というのは本当に大事だと改めて意識してほしい。これは、勉強の結果・成果を出すための、これ以上ないシンプルな方程式、唯一絶対の法則と言っても過言ではないものです。
さらに話を深めておくと、そもそも、ことばや文字はコミュニケーション手段でもあります。他者に自分の考えなりを伝えるためのものでもあるのです。それが不正確だったり、他者には理解しにくい(自分にしかわからない)ものだったら、相手に対して、たいへん不親切です。不親切どころか、そのコミュニケーション自体が成立しない、意味のないものになってしまいます。
テストの解答の文字でそこまで大げさに考える人はあまりいないかもしれないが、テストの解答も先生(採点者)とのコミュニケーションです。解答の一文字、一文はあなたから先生(採点者)に向けたメッセージです。ですから、当然、自分の考えを過不足なく、正確に伝える努力(文字を丁寧に書く・意味のわかる文を書くなど)はコミュニケーションの大前提として意識しなければならないことです。
そういう意識で日々の学習を捉え直してみると、きっとあなたの学習成果は大きく変化するでしょう。
学校や受験の勉強は無意味だ、つまらない、などという話をよく聞きますが、それは「正しい勉強」を「正しい方法」で積み重ねていない人の誤解だと思います。
「正しい方法」で行う「正しい勉強」は、一見あまり関係がないようなコミュニケーションの質を上げることにもつながるのです。
丁寧に、「正しい勉強」をするのと、単にテストの点、成績、入試の合否が目的となった「テストのためだけの学習」とでは、同じような勉強をしていても、得られるものがまったく異なります。
少なくとも東北大学は、前者をきちんと実践してきた人に入学してほしい、というメッセージを出していることは看過できることではないでしょう。
まとめにかえて「基礎・基本の重要性」
今回、注目した令和3年度東北大学入学試験の出題意図および志願者へのメッセージから、総じて、以下のことを学ぶことができました。
英語の出題意図・志願者へのメッセージであるものの、内容的には「日本語の読み書きの基礎・基本が大事」という点が随所に読み取れます。文字を丁寧に書くというのも「基礎・基本」です。
多くの人が「そんなの当たり前じゃん」「そんなかんたんなこと」と、どこかでバカにするようなことこそ、実は大事なのです。例えば、入試であれば、そういう部分が合否を分ける境界線になっているのだと改めて意識する必要があります。
「基礎・基本」をしっかり訓練した先に。東北大学などの有数の大学に進学できるような学力が身に付けられるのだ、ということに改めて注目しましょう。そして、そうした視点で、ぜひ自身の学習を見直してみてください。