【中学社会(公民)】日本国憲法の基本原則(三大原則・三大義務・改正等)

この記事では、中学社会科の公民分野で学習する「日本国憲法」の基本原則についてかんたんにまとめていきます。

公民分野では、この後、主に政治分野の内容を学んでいきますが、政治の基本的なルールがまとめられているのが憲法ですので、重要事項をしっかりと整理しておく必要があります。

主に、「三大原則」「三大義務」「憲法改正の手続き」について解説していきます。

 

日本国憲法の制定

日本国憲法の基本原則(制定)

まずは、日本国憲法の制定について確認しておきましょう。

日本国憲法は、大東亜戦争(太平洋戦争)終戦直後、GHQ(連合国最高司令官総司令部)の指示で作成されます。それ以前、日本には明治時代に制定された「大日本帝国憲法」がありましたが、その根本的な改正をされることになります。

戦争終結後、およそ1年後、1946年11月3日(現在、文化の日)に公布され、半年後の1947年5月3日(現在、憲法記念の日)に施行されました。

 

ちなみに、「公布」というのは、新たに成立した法令の内容を国民が知らせることです。天皇陛下によって行われる行為(正確には、「国事行為」という)で、実際の内容は、政府が発行する機関誌(官報)などに掲載されます。

一方の「施行」は、実際に法令の効力を発動させることです。

 

今後、公民分野の学習では、法律の話が出てきますが、新たに法律を制定する際に、この「公布」「施行」という言葉が度々登場するので、合わせてチェックしておきましょう。

 

日本国憲法の基本原則

日本国憲法の基本原則(最高法規)

日本国憲法の具体的な内容の前に、ひとつ押さえておきたい用語があります。それは、憲法というものが、そもそもどのようなものであるかということです。

端的にいえば、憲法とは国の「最高法規」です。「最高法規」とは、最も効力がある、最も優先される法のことです。

ですから、日本では、日本国憲法に定められていることに反する内容の法律は作れない(有効ではない)ということになります。

これについては、憲法前文と第九十八条に明記されています。

【憲法前文】…そもそも国政は、国民の厳粛な信託によるものであつて、その権威は国民に由来し、その権力は国民の代表者がこれを行使し、その福利は国民がこれを享受する。これは人類普遍の原理であり、この憲法は、かかる原理に基くものである。われらは、これに反する一切の憲法、法令及び詔勅を排除する
【憲法第九十八条】この憲法は、国の最高法規であつて、その条規に反する法律、命令、詔勅及び国務に関するその他の行為の全部又は一部は、その効力を有しない。

 

日本国憲法の三大原則

日本国憲法の基本原則(三大原則)

では、次に、日本国憲法のいわゆる「三大原則」について、整理していきましょう。

「三大原則」とは・・・

①国民主権
②基本的人権の尊重
③平和主義

です。この後、それぞれの具体的な内容を確認していきます。

 

国民主権

日本国憲法の基本原則(国民主権)

日本国憲法の「三大原則」のひとつ、国民主権について確認します。

これは、かんたんに言えば、「国民が主権者である」「主権が国民にある」ということを表しています。

 

「主権」というのは、その国の政治的な意思を最終的に決定する権力のことです。その意味で、「国民主権」とは、国をどのように運営していくのか、その意思決定を最終的にするのは国民ですよ、ということです。

 

このことに関しては、憲法前文と第一条に明記されています。

【憲法前文】日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し、われらとわれらの子孫のために、諸国民との協和による成果と、わが国全土にわたつて自由のもたらす恵沢を確保し、政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意し、ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する。
【憲法第一条】天皇は、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であつて、この地位は、主権の存する日本国民の総意に基く。

 

なお、上に引用した憲法第一条にある通り、日本国憲法では、国民が主権者ですが、以前の明治憲法(大日本帝国憲法)では、主権者は天皇でした。主権が天皇から国民に移り、天皇は「日本国・日本国民統合の象徴」とされていることも合わせてチェックしておきましょう。

 

ちなみに、「国民主権」(国の政治的な意思決定の権力は国民にある)とはいえ、日本国民全員が、毎日、国の政治のことを考えたり、議論したりするというのは、現実的ではありません。全国民が一斉に話し合いをするのは、物理的に不可能と言っても良いでしょう。

ですから、実際には、国民の代表者(国会議員など)を選んで、その代表者に代わりに政治的な意思決定をしてもらう方法をとっています。このしくみを「間接民主制(または、議会制民主主義)」と言います。ぜひ合わせて覚えておきましょう。

 

基本的人権の尊重

日本国憲法の基本原則(基本的人権の尊重)

次に、日本国憲法「三大原則」のひとつ、「基本的人権の尊重」について確認していきます。基本的人権については、別の単元で具体的な内容を学習するので、ここでは、基本的人権がどのようなものかを概観しておきましょう。

 

基本的人権について、日本国憲法では、第十一条、第十二条、第十三条、第九十七条に明記されています。

 

【憲法第十一条】国民は、すべての基本的人権の享有を妨げられない。この憲法が国民に保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利として、現在及び将来の国民に与へられる。
【憲法第十二条】この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によつて、これを保持しなければならない。又、国民は、これを濫用してはならないのであつて、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負ふ
【憲法第十三条】すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする
【憲法第九十七条】この憲法が日本国民に保障する基本的人権は、人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果であつて、これらの権利は、過去幾多の試錬に堪へ、現在及び将来の国民に対し、侵すことのできない永久の権利として信託されたものである。

 

まず、押さえておかなければいけないのは、基本的人権は「侵すことのできない永久の権利」だということ。ただし、何でもありということではなく、「個人の不断の努力」によって保持するもので、「濫用してはいけない」ものとされています。

さらに、最も注目しておくべきは、基本的人権は、「公共の福祉」に反しない限り、最大の尊重をされるということ。(ちなみに、「公共の福祉」は、社会全体の利益と捉えておけば良いでしょう。)

つまり、かんたんにまとめれば、「基本的人権」は、侵すことができない永久の権利で、最大限尊重されるべきものではあるが、何でもかんでも個人の権利ばかりを主張(濫用)してはならず、「公共の福祉」という考えで一定の歯止めをかけているもの、というわけです。

 

より具体的な「基本的人権」についての内容は、こちらの記事をご覧ください。

【中学社会(公民)】基本的人権とは?(平等権・自由権・社会権 他)

 

平和主義

日本国憲法の基本原則(平和主義)

さて、日本国憲法の三大原則の最後のひとつ、「平和主義」について確認しておきましょう。

「平和主義」に関しては、その内容が憲法第九条に明記されています。より具体的に言えば、憲法の第二章が「戦争の放棄」であり、第二章は条文が第九条しかありませんので、まずは条文を確認しておきましょう。

【憲法第九条】日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する
② 前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない国の交戦権は、これを認めない

 

第九条には、大きく3つの点が記されています。

①戦争の放棄
②戦力の不保持
③交戦権の否認

 

日本国憲法の三大原則「平和主義」の内容としては、上の3つを押さえておきましょう。

 

国民の義務(三大義務)

では、次に、日本国憲法に明記された国民の義務(いわゆる三大義務)について確認していきます。

日本国憲法の基本原則(三大義務)

日本国憲法には、国民の権利である「基本的人権」について明記されるとともに、義務についても記されています。大きく3つの義務があり、これらをまとめて「三大義務」とまとめられています。

それぞれの義務が記された条文を確認しておきましょう。

 

【憲法第二十六条】すべて国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する
② すべて国民は、法律の定めるところにより、その保護する子女に普通教育を受けさせる義務を負ふ。義務教育は、これを無償とする。
【憲法第二十七条】すべて国民は、勤労の権利を有し、義務を負ふ
② 賃金、就業時間、休息その他の勤労条件に関する基準は、法律でこれを定める。
③ 児童は、これを酷使してはならない。
【憲法第三十条】国民は、法律の定めるところにより、納税の義務を負ふ

 

国民の義務に関しては、納税の義務以外は、それぞれ権利とセットで条文に明記されています。教科書や参考書などでは、権利と義務は別々に紹介されている場合も多いのですが、教育や勤労は、権利であるとともに、義務でもあるという点に注目して覚えましょう。

 

ちなみに、義務教育というのは、子どもの義務ではなく、大人に対しての義務という点も注目しておきましょう。よく「何で学校に行かなければいけないの?」という問いに「義務教育だから」という人を見かけますが、子どもには義務はありません。子どもが持っているのは「教育を受ける権利」の方です。

 

憲法改正の手続き

日本国憲法の基本原則(改正手続き)

では、最後に、憲法改正の手続きについて確認しておきましょう。

憲法とは、すでに確認した通り、国の「最高法規」です。だから、それを改正するためには、高いハードルが設けられています。

通常の法律の場合、衆議院・参議院それぞれ出席議員の過半数が賛成すれば、新たな法律の制定、既存の法律の改正、あるいは、廃止ができます。

しかし、最高法規である日本国憲法の場合は、衆参それぞれの総議員の三分の二以上の賛成で「憲法改正の発議」がなされます。その後、「国民投票」によって主権者である国民の過半数が賛成することで憲法が改正されます。

 

衆議院・参議院、それぞれの総議員の三分の二以上発議、そして、国民投票が行われる点は、憲法改正手続きの大きな特徴ですので、しっかりと覚えておきましょう。

 

日本国憲法の基本原則(まとめ)

下の図は、これまでお話ししてきたことをまとめたものです。

日本国憲法の基本原則(まとめ)

日本国憲法の基本原則の単元では、大きく「三大原則」「三大義務」そして「改正手続き」について学習します。

それぞれポイントとなる重要用語を覚えましょう。また、憲法の条文についても、すべて暗記する必要はありませんが、ここで紹介したものにはしっかりと目を通しておきましょう。

 

日本国憲法の基本原則【動画講座】

ここまでの内容をまとめた動画講座です。ぜひ、記事の内容と合わせてご覧ください。

 

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