【中学社会(公民)】好景気・不景気の時の財政・金融政策とは?-景気変動と調整

中学校の社会の「公民」は、主に政治分野と経済分野を学習します。が、どちらにも関わる内容もありますので、まとめて整理すると効果的・効率的に勉強できます。

そのひとつが「財政政策と金融政策」の内容です。

「財政」は国(政府)が行うものですので、政治的分野と言えます。「金融」は日本銀行(日銀)が中心となる話ですので、経済的分野といえるでしょう。ですが、これらは別々に学習するよりも、まとめて整理した方が良い内容です。さらに、これらの話題に関しては、前提として「好景気(好況)」と「不景気(不況)」、「インフレーション(インフレ)」と「デフレーション(デフレ)」という景気変動の話を理解しておく必要があります。

 

そこで、今回は、そもそも「好景気(好況)」・「不景気(不況)」、「インフレ」・「デフレ」って何なのか、そして、そうした景気変動に対して、政府と日本銀行がどんな「調整」を行うのかという点をまとめて整理しておきます。

 

今回まとめていく内容をおさえておけば、政治・経済のニュースを理解する上でも役立ちますので、ぜひしっかりと学んでおきましょう。

 

※最後に動画を貼り付けています。記事内容と同じ内容ですので、用途に合わせてご活用ください。

 

そもそも「好景気・不景気」って何なの?

ここでのメインテーマは「財政政策」と「金融政策」ですが、それらを整理して理解するためには、前提として「好景気」「不景気」という景気変動について知っておく必要があります。

日本は長らく「不景気」「デフレ」などと言われていますが、聞いたことはありますか?

そもそも「不景気」「デフレ」、あるいは、その逆の「好景気」「インフレ」って何なのでしょうか?

 

それらを理解するためには、以下の2点で整理しておくとわかりやすいでしょう。

①市場にあるお金の量(多いや少ないか)
②①のお金の流動性(回っている・動いているかどうか)

 

これら2つの点から「好景気」「不景気」がどんな状態なのか、それぞれ確認していきます。

 

好景気(好況)ってどういう状態?

【中学社会(公民)】好景気(好況)・インフレーション(インフレ)ってどういう状態?

先ほどの2つの点で整理すると、好景気(好況)というのは、

①市場にお金が「たくさん」ある
②市場のお金が流動・循環している(動いている)

という状態です。

 

お金がたくさんあって、ぐるぐる回っている状態ですから、当然、僕らのような一般消費者は、何かを買ったり、サービスを受けたりします。こうした状態を、購買力(需要)が増加すると言います。

 

多くの人が買い物をすると、当然、物(在庫)が少なくなりますね。こうした状態を、需要に対する供給が減少するといいます。

 

みんなが物を欲しがっているのに、売るものが減ってくる・・・すると、物の値段が上がっていきます。

これは何となく感覚的にわかると思います。

数が少ないもの(希少性が高いもの)は価格が高い。いわゆるプレミア価格というやつですね。

この物の値段=物価が上がるというのも、好景気(好況)の特徴のひとつです。

 

さらに、お金の方は、市場にたくさん出回っているわけですから、価値が下がっていきます。

この点はイメージしづらい人もいるかもしれませんが、物と同じように考えれば理解できると思います。先ほどのプレミア価格と逆と考えれば良いですね。世の中にたくさんあるものは、買いたい人がたくさんいても値段は上がりません。たくさんあるからです。工場で大量に生産したものは、比較的安い価格で買うことができるものが多い傾向にあります。

このような物価と連動して、貨幣価値が下がるというのも好景気(好況)の特徴のひとつです。

 

さらに、付け加えておくと、好景気(好況)、つまり、「物価が上がる」「貨幣価値が下がる」状態が行き過ぎた状態を「インフレーション(インフレ)」といいます。

 

教科書や資料集などで、大量の札束を運んでいる人の写真を見たことがありませんか?

物価が上がり、貨幣の価値が下がる状態とは、たとえば、自動販売機でジュースを買うのに、札束が必要だという状態です。

 

好景気(好況)と聞くと、良いイメージに感じるかもしれませんが、行き過ぎると、それはそれで大変な状況です。

ですから、好景気(好況)になり過ぎたときには、調整が必要になります。その調整が「財政政策」であり「金融政策」というわけです。これらについては、後でくわしく確認していきます。

 

不景気(不況)ってどういう状態?

すでに「好景気(好況)」について整理したので、「不景気(不況)」は、かんたんに言えば、その逆です。

 

最初に示した2つの点で整理すると、不景気(不況)というのは、

①市場にお金があまりない
②市場のお金が流動・循環していない(動いていない)

という状態です。

 

お金が少なく、ぐるぐる回っていない状態ですから、当然、僕らのような一般消費者は、何かを買ったり、サービスを受けることを控えます。節約したり貯金をしたりする人も増えるかもしれませんね。こうした状態を、購買力(需要)が減少すると言います。

 

多くの人が買い物をしなくなると、当然、物(在庫)が多くなりますね。こうした状態を、需要に対する供給が増加するといいます。

 

みんなが物を買わず、売るものが増える(余っている)・・・すると、物の値段が下がっていきます。

これも、先ほどと同様に、何となく感覚的にわかるのではないでしょうか。

数が多いもの(希少性が低いもの)は価格が安いってやつですね。

この物の値段=物価が下がるというのも、不景気(不況)の特徴のひとつです。

 

さらに、お金の方は、市場にあまり出回っていないわけですから、価値が上がっていきます。お金がプレミア価格になるといってイメージで良いでしょう。

 

このような物価と連動して、貨幣価値が上がるというのも不景気(不況)の特徴のひとつです。

 

さらに、付け加えておくと、不景気(不況)、つまり、「物価が下がる」「貨幣価値が上がる」状態が行き過ぎた状態を「デフレーション(デフレ)」といいます。

 

日本は長らく、このデフレ状態が続いているので、これも感覚的に分かりしやすいかもしれませんね。

 

では、これまで紹介したような「好景気」「不景気」が行き過ぎた状態、「インフレ」「デフレ」になった場合の「調整」について整理していきましょう。

 

「財政政策」「金融政策」とは?

「財政政策」「金融政策」の基本イメージ

【中学社会(公民)】「景気の調整」=財政政策・金融政策の基本イメージ

好景気・不景気が行き過ぎた状態、つまり、インフレやデフレになった場合(あるいはは、そうなるのを防ぐため)に行われる「調整」には、2種類あります。

国(政府)が行う「財政政策」日本銀行(日銀)が行う「金融政策」です。

 

それぞれの内容を確認する前に、どういったことが行われるのか、基本的なイメージを整理しておきます。

先ほどお話しした、「好景気」と「不景気」がどんな状態かは覚えていますか?

 

お金がたくさんあって、ぐるぐる回っているのが好景気。それが行き過ぎている状態がインフレです。

逆に、お金の量が少なくて、回っていないのが不景気。それが行き過ぎたのがデフレです。

 

ですから、好景気の行き過ぎたインフレの場合は、市場からお金を回収する=貨幣量を少なくして、ぐるぐる回らない状態にしていく、という調整が必要になります。

逆に、不景気の行き過ぎたデフレの場合は、市場にお金を供給する=貨幣量を多くして、ぐるぐる回る状態にしていく、という調整が必要になります。

 

これが「財政政策」「金融政策」の基本的なイメージです。

 

では、政府が市場からお金を回収する手段とは、何でしょうか?

それが「増税」です。

税金を増やすことで、市場のお金を回収するわけです。

 

逆に、政府が市場にお金を供給する手段は、「公共事業」などのいわゆる「財政出動」(=財政支出を増やすこと)です。

 

この基本的なイメージを持ちながら、政府の「財政政策」と日銀の「金融政策」を確認していきましょう。

 

財政政策とは?

【中学・社会(公民)】国(政府)による財政政策とは?

先ほど、かんたんに触れましたが、国(政府)が行う「財政政策」は、主に、税金(増税・減税)と政府の支出(財政支出)の増減で行われます。

 

好景気の行き過ぎたインフレの場合、市場からお金を回収する必要があるので、増税や財政支出を減らすという調整が行われるのが基本です。

財政支出を減らすというのは、市場からお金を積極的に回収することにはつながりませんが、通常、政府から市場に供給されるお金を減らすことになります。

 

インフレの逆、不況の行き過ぎたデフレでは、市場にお金を供給しなければいけないので、減税や財政支出を増やすという調整が行われるのが基本です。

減税というのは、市場にお金を積極的に供給することではありませんが、通常、政府に回収されるお金を減らすことで市場にあるお金をなるべく減らさない状態になります。

 

以上が、「財政政策」の基本的な内容です。

 

金融政策とは?

【中学・社会(公民)】日本銀行(日銀)による金融政策とは?

 

日本銀行(日銀)が行う「金融政策」を整理する前に、そもそも日銀はどんな組織なのかを確認しておきます。

日銀とは、主な役目が3つあります。

教科書などでは、次のように紹介されているはずです。

①発券銀行
②政府の銀行
③銀行の銀行

 

ここでは、特に①の発券銀行に注目しておきましょう。

発券とは、まさに、お金(お札)を発行することです。

10,000円札などの紙幣をみればわかりますが、紙幣の正式名称は、「日本銀行券」です。日本銀行が発行した券ということです。

 

つまり、日銀は、お金を作ることができるところなので、日銀が行う「金融政策」は、お金を作る量を調整したり、お金を直接的に市場に供給したりすることになります。

 

ただし、日銀が直接わたしたちにお札を配ったりするわけではありません。

すでに紹介した通り、日銀は「政府の銀行」「銀行の銀行」でもあるわけなので、政府とのやり取りや私たちが普段利用している一般的な銀行とのやり取りの中で、市場のお金の量を調整していきます。

 

わかりやすいところでいえば、「国債」の売買です。

 

国債というのは、国(政府)の借金(正確には、借用書のようなもの)です。

国債を日銀が買うということは、代わりに相手にお金が渡ることになります。つまり、市場にお金が供給されることになります。ですから、デフレなどの不況の場合に、日銀は積極的に国債を買うという調整を行います。

逆に、日銀がすでに保有している国債を売る場合は、代わりに相手からお金を受け取ることになります。つまり、市場からお金を回収するということです。ですから、インフレなどの好況の場合に、日銀は国債を売るという調整を行うのです。

 

国債だけでなく、株式の売買などで市場の貨幣量を調整を行うこともあります。そうした、日銀の金融政策を「公開市場操作」と呼んでいます。

 

以上が、「金融政策」の基本的な内容です。

 

国債の売買の詳細や、一般的な銀行などの金融機関とのやり取りなど、細かいルールなどがありますが、基本的なイメージを持つには、ここまでの内容をおさえておけば大丈夫だと思います。

 

ちなみに、この国債に関しては以前から「日本は借金が多い」「私たち国民の預貯金で国債が買われている」「日本は借金が多いから財政破綻する」などと言われ続けてきています。これらについて、特に、「国債は誰が買っているのか?」「はたして日本は財政破綻するのか?」といった点を分かりやすく、かんたんにまとめた動画を以下のページで公開しています。ぜひ合わせてご覧ください。

【中学・社会(公民)番外編】国債発行のしくみ:国債は私たち国民の借金なの!?

 

さて、いずれにしても、先ほど紹介した基本的なイメージ(インフレの場合、市場からお金を回収・デフレの場合、市場にお金を供給)をベースにして、それぞれの政策の中身をみていくと、すっきりと整理できると思うのですが、いかがでしょうか?整理できましたか?

 

好況・不況のときの財政政策と金融政策【動画講座】

では、ここまでのお話しをまとめて解説した動画を貼り付けておきますので、ぜひ記事の内容と合わせてご覧ください。

 

【社会】地歴公民講座 動画講座一覧

 

効果的・効率的に「成果を出せる」勉強方法について知りたい方は、ぜひこちらの記事も合わせてご覧ください。タイトルに「中学生の勉強法」とありますが、小学生でも高校生でも(場合によっては大人でも)役に立つ内容になっています。

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